交通事故で営業補償を受けるための基礎知識

運悪く交通事故に巻き込まれると様々な損害を被ります。もし自営業やタクシーの運転手などの仕事をしていて交通事故に巻き込まれた場合は、さらに当面の間は仕事も休業せざるを得ないこともあります。仮に休業となった場合はその間の逸失利益は誰が補償してくれるのか、営業補償を受ける場合の条件は何か、など多くの疑問が生じがちです。

ここでは交通事故の営業補償の仕組みと補償を受ける上で必要となる基礎知識を解説します。

損害の種類と営業補償

大別すると交通事故の損害は2つに分けられます。1つが財産的損害であり、もう1つが精神的損害です。前者は事故に巻き込まれて自分の車が損傷したとか、お店に車が突っ込んだとか、事故で転倒した際に装飾品が壊れたなどが該当します。

後者は怪我の痛みや治療に通うことなど精神的な苦痛に伴う損害が該当します。営業補償はこのうち財産的損害における消極損害から算出されます。消極損害とは事故によりお金の面で何らかの不利益が生じていることです。

例えば交通事故にあった人がラーメン屋の店主だった場合を考えてみましょう。事故でしばらく仕事ができなくなると、当然お店は休業せざるを得ません。本来得られるはずだったお金が得られなくなる訳ですから、そこに財産の損害(消極損害)が生じています。

この損害を補償するのが、交通事故の営業補償です。

営業補償に該当する人

交通事故に遭ったからといって誰しも営業補償を受け取れる訳ではありません。補償の対象となる人には条件があり、簡潔に述べると現在仕事をしているなどして、休業による損失を被る人が対象です。つまり会社員や自営業者などが該当します。

逆に該当しない人は、学生や年金生活者、生活保護の受給者などです。ただしこれらの対象者であっても、何らかの収入を得ている場合は営業補償の対象になることがあります。営業補償判断が難しいケースとしては、オーナー兼店主があります。

そのお店のオーナーである場合は、交通事故に遭っても得られるお店の収入は減らないため、営業補償はもらえません。しかし店主も兼ねてお店で実際に労働をしている場合は、オーナーの労働の実態を考慮して補償がもらえるケースもあります。

また実際に営業補償を受けるにあたっては、働いて収入を得ていた証明が必要です。そこで源泉徴収票や休業損害証明書などを準備しておく必要があります。

補償金額の算出方法と3つの基準

実際に補償を受けるには、その金額を算出する必要があります。算出方法は3つの基準に基づいています。1つ目が自賠責基準、2つ目が任意保険基準、そして3つ目が弁護士基準と呼ばれるものです。1つ目は自賠責保険の会社が取り決めている基準で、自賠責保険に対する請求で使われます。

自賠責基準の営業補償は日額5,700円をベースに休業日数を掛け合わせた金額です。例えば交通事故で被害者が3ヶ月(90日)の休業を強いられた場合は、513,000円になります。

このベース金額は最低金額のため、仮に実際の休業に損失がこれ以下の金額であっても5,700円で計算されます。『関連資料 … 弁護士法人アディーレ法律事務所 … 事故後遺障害

逆に1日あたりの休業損失が5,700円を超えている場合は、19,800円を限度にベース金額が上がることもあります。2つ目の任意保険基準は、任意保険会社ごとに定められた独自の基準で算出が行われます。保険会社によっては自賠責基準と同じ算出方法のところもあれば、より上限額が高いベース金額を適用して算出する所もあります。

3つ目の弁護士基準の算出方法は、1日あたりの基礎収入を休業日数に掛け合わせて算出します。

基礎収入は事故前の3か月で得られた収入の平均です。

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固定経費は補償に含まれるか

休業中であっても、会社やお店には固定費が掛かるため当然支出は避けられません。例えば水道ガス電気といったライフラインや家賃などです。これらの固定経費は補償に含まれるかどうかについてですが、支出が生じている以上、営業補償の対象になります。

ただし固定費がすべてその金額のまま営業補償として支払われる訳ではありません。あくまで算出した1日あたりの補償金額に含まれるものであって、例えば自賠責保険から支払われる場合は、1日の上限補償額である19,800円を超えることはありません。

自営業の休業日数の算出方法

補償金額の算出方法の項目でも取り上げた休業日数ですが、自営業の人はその日数を自己申告する訳にもいかないため、所定の計算方法によって休業日数を確定します。自営業の人の休業日数は、実通院日数と怪我の状況を元に判断がされます。

そのため通院を終えて自宅で療養していても、怪我の状況からまだ仕事に就けないと判断される場合は、通院していなくても休業日数に含まれることがあります。

自営業で営業補償をもらう際に必要なものと支払い時期

自営業の場合は営業補償の受給で必要な書類をすべて自分で用意する必要があります。必要な書類はまず税務署に渡す確定申告書の写しがあります。これは1日あたりの補償金額の計算の際に必要です。また先の項目で述べたように、休業日数を算出する際には実通院日数や怪我の状況を考慮する必要があるため、それを証明する医療機関の診断書も用意しておきます。

営業補償の支払い時期は、必要書類の提出が終わって数日から1週間程度が目処です。民間の保険会社が支払う場合は、仮払いをしてくれるので書類提出さえ行えば、示談前であっても支払いに応じてくれます。

営業補償の損害額は誰が証明するか

ここまで交通事故の営業補償について解説しましたが、ではその損害額を実際には誰が証明するのかという問題があります。これについては被害者が証明をする必要があります。これは民法の不法行為にあたるためです。交通事故被害でも、自賠責補償の場合は過失の有無は自賠法に基づいて加害者が行います。

しかし営業補償は前述のように民法案件である以上、被害者側が損害額なども算出・証明する必要があるため注意を要します。

判例から見る営業補償

実際の裁判で営業補償を受けることになったケースを見ていきます。以下は平成24年(ワ)16459号の判例です。概要は個人タクシー運転手の男性が停車してトランクを開けていたところに加害者の車が追突し、左大腿骨骨幹部開放骨折や胎盤骨折などの怪我により併合9級の後遺障害が残っています。

このケースでは入院256日、通院153日の大怪我を負っており、総損害額は5,630万円あまり、営業補償は1,039万円が東京地方裁判所で認められています。

休業期間として認定された日数は803日に及んでおり、これに前年の基礎収入である472万円から1日の収入を計算し、休業期間を掛けた1,039万円が営業補償となった訳です。